CD評
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これは驚異的なレコーディングである。バスーンの名手田中雅仁は、ここで彼の信じがたい才能を、全く新しい分野で披露している。このディスクで田中はドゥヴィエンヌの6曲のソナタを、オリジナルの1820年製のサヴァリー(J.N.Savary,
1820, Paris)の名器で演奏している!演奏はあらゆるレヴェルで素晴らしいものである。彼の古楽器の演奏で、際立って素晴らしい能力は、(楽器特有の)1・2の曇った響きの音を除いて、いわゆる「古楽器」を演奏しているとかんじさせないことである。彼の音、テクニック、フレージング、ダイナミクス等はすべて美しく処理されている。この歴史的な楽器の年齢にもかかわらず、田中の熟練した手による演奏は素晴らしく「モダーン」である。古楽器の愛好者であるならば、ぜひこのCDを聴くべきである。古楽器それ自体やその演奏においては、構造的・技術的な欠陥があり、現代の楽器による「繊細さ」に欠けていると思われている風潮があるが、田中によるこのCDは、真の芸術家の手による演奏ならば、これらの古楽器はまだ人々の魂を感動させ、食傷している現代の聴衆さえも感激させることができるということを証明している。ブラヴォー田中!
(The Double Reed 1999年)アメリカ |