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英独仏の影響を受けたオランダの木管楽器のスタイル
| 田中 | バスーンの演奏法などではいかがでしたか? |
| ポラード | 私がオランダに来た当時、イギリスのバスーンニストはリードを自分で削らずに既製品を買う人がほとんどでした。しかしオランダに来てみると、全員が自分の手でリードを削っているのです。演奏について言えば、オランダの方が水準が高かったと思います。もちろん例外はあり、どの国にも飛び抜けて優れた人はいるものですが、平均してオランダの方が程度は上だという感想をもちましたね。バスーンの奏法で言うなら、オランダの奏法はイギリスのそれに比べて、よリ柔軟である、と言えるでしょう。イギリスではほとんど誰もヴィブラートをかけませんし、大変ストレートに演奏します。一方オランダでは、ヴィブラートを多く使って、楽器を通して歌をうたう、ということが理想とされています。私自身も後者の方が好きですね。もちろん奏法には個人差があり、一般論として一概に言えない面もあるわけですが。 |
| 田中 | 外国人としてポラードさんは、オランダを大変冷静に、かつ客観的に観察されたことと思いますが、ここでオランダの木管楽器のスタイルについてお語し項けませんか? |
| ポラード | オランダは、地理的な要因からもいろいろな国の影響を受けざるをえなかった国てす。地理的に言えばつまり、ご存知のように英・独・仏それに北欧の真ん中に位置していますので、絶えず外国からの影響を受けていました。 ここで、オランダの木管楽器のそれぞれの演奏法をイギリスの奏法と比較しながらご説明すると、 例えばクラリネットは、イギリスではコンスタントにヴィブラートを使用しますが、オランダではそこまで多くヴィブラートを用いません。オランダの代表的なクラリネット・プレィヤーとしては、ジョージ・ピーターソン、あるいはピート・ホーニングなどの名前があげられます。楽器はドイツ式のボディにべーム式のキーを付けたシステムが一般的です。このことからも分かるように、ドイツとフランスの中間のスタイルを狙っているのです。 フルートもまた同様に、様々な国のスタイルの一部を受け継いでいるところがあリます。フルートに関してオランダ固有のスタイルを述べるのは大変難しいですね。しいて言えば、フーペルト・パルワーザーという非常に有名なプレィヤーがおリましたが、彼以後、木管のフルートを使用しているプレイヤーが今だにいる、ということでしょうか。しかし、若い世代は皆、金属製にかわっていますが。 ホルンの演奏スタイルは、最近変化しつつあリます。もともとは英・独・仏の中間的な演奏法だったのですが、最近はチェコの影響が強くなっているんです。と言うのも、アムステルダムの音楽院のプロフェッサーが実はチェコ人で、彼はとても多くの優れたプレイヤーを育て、オランダの有名なオーケストラにその人材を送り込んでいるからです。ホルンの奏法を具体的に言えば、彼等はコンスタントにヴィブラートを使います。それによって大きく、かつ柔らかく、暖かい音を目指しています。この音は、イギリスやアメリカのホルンの音に比べるとよリ柔軟ですね。ホルンの例のように、オランダには常によリ良いものを取リ入れて行こうという姿勢が伺えます。 次に、オーボーに関して言えば、この楽器にはオランダ式と言える固有のスタイルがあリます。私が入団した当時、ホーカン・ストテインという有名なオーボイストが首席で活躍していましたけど、彼がオランダ式と言ったスタイルを確立したと言えるでしょう。そのスタイルの一番の特徴はリードで、その形は他の国のものに比べてより短く、幅が広い。また、張力を保つためにハリガネを使っています。音色は大変オープンで、これに比べるとイギリスのオーボーの音は、少しカバード(おおわれたような)な音に感じますね。またドイツの音も大変カパードな印象を受けます。 |
