演奏評

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	演奏者の田中雅仁については特筆しなければならない。彼は今まで私が聴いた最高のバスーンニストである。彼は全てを備えている！驚異的、圧倒的なテクニック、稀に見る音質の均一性、センチメンタルにならないエクスプレッシヴなフレージング。
	Eduard Mousset(HARMONIE-OPERA 1982年12月)フランス
	田中は大変素晴らしい音楽家であり、火花の散るような超絶技巧をフレージングとバランスの繊細さをもって操ることができる。そしてスコアに書かれている以上の音楽を引き出すことができる。
	Barbara Jahn(Hi-Fi News 1983年2月)イギリス
	バスーンの色彩豊かなポートレートである。華麗なテクニックによる驚異的な多色画法、唖然とするほどのスピードの可能性。
	Michel Debrocq(Le Monde de la Musique 1984年)フランス
	田中はドイツ・ロマン派の語法を良く理解し、輝きを持って演奏した。それは現代におけるこれらの曲の模範ともいうべき演奏である。美しい音と素晴らしいテクニックである。
	(Fanfare 1983年)アメリカ
	「くまん蜂の飛行」における唖然とするほどのスピード。驚異的なテクニックである。田中はまたバスーンを声楽的に歌わせることのできる芸術家である。
	Alice Libert(Le Derniere Heure 1984年)ベルギー
コンサート評	内容の濃い、実に新鮮な演奏であった。４オクターヴにまたがる広い音域を自在に行き来し、くぐもるような音色が、ふっとかき消え、あるいは野太いふくらみと、その表情の豊かさには驚かされる。田中の持つ新しいテクニックのさまざまは、この柄の大きく扱いにくそうな楽器に、いとも身軽な音楽の装いを与え、ソロとしての可能性を大きく開いてみせた。
	(毎日新聞- 丘山　万里子、１９８６年１０月１５日）
コンサート評	さまざまな文化を咀嚼した上での、彼の前衛的な演奏は秀逸なものであり、木管楽器の可能性を追求した現代奏法の妙味を十分に楽しませてくれた。田中は思いのままにバスーンを操り旋律を歌いあげていた。そして高音域の早いパッセージの演奏でも、大変なテクニシャンであることを示していた。‥略‥　作曲家と一体となってバスーンという古典的な楽器を現代に蘇らせようとする、田中雅仁の音楽家としての姿勢を高く評価したい。
	（音楽芸術　−　川崎　優、　１９８７年１月号）
	ボストン、アムステルダムで学び、現在国際的に活躍する田中雅仁は、まさしく世界のトップクラスに位置するバスーン奏者であることが、当ＣＤ、「バスーン・ファンタジア」の初め３曲までを聴いたところで明らかになる。‥略‥ここまでの彼の持つ抜群の技巧と歌心は誰の耳にも明らかとなるだろう。しかもそれに続いてショパン最美の旋律、嬰ハ短調のエチュード（作品２５−７）がバスーンならではの太く、しかも繊細な音調で見事に奏でられると、さらに深くこのディスクの世界に引き込まれてしまう。‥略‥ほとんど編曲ものばかりのリサイタルだが、小策を弄さずに正面から曲の美しさと取り組む態度がすがすがしく、「バスーンでも吹ける」の域を越えて「バスーンだから」こんな情感がかもし出せる、とすら感じさせるのは立派と言うほかない。
	（レコード芸術　−　濱田滋郎、１９９３年２月号）
	田中雅仁は最大のバスーン・ヴィルテュオーソである。イサン・ユンの作品における、極東の瞑想的な精神世界を再現する上では、いうまでもなく最高の演奏家であるが、彼の豊かな音楽性と、息を呑むような超絶技巧は、東洋の作品にのみでなく、サンサーンスやヒンデミットのソナタ、また１９世紀のロマンティックな作品、そしてフルートなどのトランスクリプションの演奏に際しても十分に発揮されている。どのような作品にも対応する、彼の柔軟な感性とインテリジェンスには驚嘆させられる。
	(Fono Forum 1992年) ドイツ
	ピエルネの作品はオープニングの曲としては最高の選曲である。サンサーンスのソナタは今まで私が聴いた最高のものである。特に最終楽章の哀愁を帯びた美しさは出色である。
	(American Record Guide 1997年) アメリカ
	田中が彼の超絶技巧で、やすやすと最高音域のe2（しかもディミヌエンドで）クロマティックで駆け上がるのは、信じがたいほどである！同様に、パガニーニ／アラールの極めて難しいパッセージを征服するのには呆然とさせられてしまう。デュティーユのf2は言うまでもない！このＣＤあらゆる面において傑出したものである。私はノエル・ガロンの作品の、暖かく官能的で完璧に繊細にコントロールされた美しい演奏に心を奪われてしまった。彼はまさしく現代の巨匠の一人である。
	(The Double Reed 1997年）アメリカ
	このＣＤ(Arpeggione Sonate)はこのバスーンの巨匠に新たな「美」である。収録された曲目はすべての有名な作品のトランスクリプションである。筆者はこれらの曲はバスーンには適さないのではないかと思っていたが、田中はその概念を完全に覆してしまった。彼の「アルペジョーネ・ソナタ」はシューベルトがバスーンのために作曲したと思われるほどに素晴らしい。ただ「ウワオ！」と驚嘆するのみである。
	(The Double Reed 1997年)アメリカ
	これは驚異的なレコーディングである。バスーンの名手田中雅仁は、ここで彼の信じがたい才能を、全く新しい分野で披露している。このディスクで田中はドゥヴィエンヌの６曲のソナタを、オリジナルの１８２０年製のサヴァリー（J.N.Savary, 1820, Paris)の名器で演奏している！演奏はあらゆるレヴェルで素晴らしいものである。彼の古楽器の演奏で、際立って素晴らしい能力は、（楽器特有の）１・２の曇った響きの音を除いて、いわゆる「古楽器」を演奏しているとかんじさせないことである。彼の音、テクニック、フレージング、ダイナミクス等はすべて美しく処理されている。この歴史的な楽器の年齢にもかかわらず、田中の熟練した手による演奏は素晴らしく「モダーン」である。古楽器の嬰後者であるならば、ぜひこのＣＤを聴くべきである。古楽器それ自体やその演奏においては、構造的・技術的な欠陥があり、現代の楽器による「繊細さ」に欠けていると思われている風潮があるが、田中によるこのＣＤは、真の芸術家の手による演奏ならば、これらの古楽器はまだ人々の魂を感動させ、食傷している現代の聴衆さえも感激させることができるということを証明している。ブラヴォー田中！
	(The Double Reed 1999年)アメリカ